こんにちは。ピックルマニア、運営者の「マサル」です。ピックルボールを始めたばかりの頃、複雑なルールやサーブの打ち方に関する疑問で頭がいっぱいになった経験はありませんか?
私自身も最初はテニスとの違いに戸惑い、自分のサーブが反則になっていないか不安になることがありました。特に2025年のルール改正では、サーブのリリース方法やパートナーによるコールの義務化など、知っておくべき重要な変更点がいくつかあります。
この記事では、これから競技を始める方やルールを再確認したい方に向けて、ピックルボールのサーブに関する基礎知識からダブルスでの実践的な動き方までを、私の経験を交えながら分かりやすく解説していきます。
【記事のポイント】
- アンダーハンドサーブとドロップサーブの違いと正しいフォーム
- 2025年のルール改正で変更されたサーブ周辺の規定
- ダブルスにおける複雑なサーブ順とスコアコールの仕組み
- 反則を防ぎゲームを有利に進めるためのサーブのコツ
ピックルボールのルールに基づくサーブの基礎
ピックルボールにおいてサーブは単にラリーを始めるための合図ではありません。相手を崩すための最初の攻撃でもありますが、同時に厳格なルールが存在するデリケートなショットでもあります。
テニスのように「エースを狙って叩き込む」ことが必ずしも正解ではなく、まずはルールという「土俵」を正しく理解することが上達への第一歩です。まずは基本となる2種類のサーブ方法と、絶対にやってはいけない禁止事項について、その理由も含めてしっかり押さえておきましょう!
基本となるアンダーハンドサーブの正しい打ち方
アンダーハンドサーブはボールをバウンドさせずに空中で打つ、最も伝統的でポピュラーなスタイルです。多くのプレーヤーがこの打ち方を採用していますが、実はピックルボールの中で最も「フォルト(反則)」を取られやすいショットでもあります。
なぜなら、このスポーツは「誰もが楽しめる長いラリー」を理念としているため、サーブ側が圧倒的に有利になるような「上から叩きつける高速サーブ」を構造的に防ぐ仕組みになっているからです。
具体的には、ボールをインパクトする瞬間に、以下の3つの厳しい動作制限(通称:サーブの三原則)を同時に満たす必要があります。これらは審判が最も目を光らせるポイントですので、一つずつ詳細に確認していきましょう。
アンダーハンドサーブの三原則(インパクトの瞬間)
- アームの上昇軌道(Upward Arc):サーブを打つ際、腕は必ず「下から上へ」向かう動きの中でボールを捉えなければなりません。水平に振るサイドスイングや、上から下へ振り下ろす動作は即座にフォルトとなります。
- パドルヘッドの位置:パドルの先端(ヘッド)の最も高い部分が、手首(リストジョイント)の最も高い部分よりも「下」にある状態で打たなければなりません。テニスプレーヤーが無意識にやってしまう「ラケットを立ててトップスピンをかける動作」は、このルールに抵触します。
- コンタクトポイントの高さ:ボールを打つ位置(コンタクトポイント)は、サーバーの「おへそ(ウエストレベル)」より下の位置でなければなりません。ここで言うウエストとは腰骨ではなく、へその位置を指します。
特に注意が必要なのは、「パドルヘッドの位置」です。縦長のパドルを使用している場合、意識して手首をコック(親指側に曲げる動作)しないと、ヘッドが手首より下がらないことがあります。
自分で動画を撮ってみると、「感覚では下げているつもりでも、映像で見るとヘッドが上がっていた」というケースは非常に多いです。
もし、この三原則を守りながら強いボールを打つのが難しいと感じる場合は、後述するドロップサーブへの切り替えを検討するのも一つの賢い戦略と言えるでしょう。
初心者にも最適なドロップサーブの利点
「アンダーハンドサーブのフォームが難しくて安定しない」「どうしても腰より高い位置で打ってしまう」という方に私がおすすめしたいのがドロップサーブです。
これはボールを一度地面に落として(バウンドさせて)から打つ方法で、もともとは身体的な制約がある方のために考案されましたが、現在では戦略的な選択肢として多くのトップ選手も採用しています。
ドロップサーブの最大のメリットは、先ほど説明した「アンダーハンドサーブの三原則」が適用されないという驚くべき特例がある点です。
ルール上、一度バウンドさせたボールであれば手首よりヘッドが高くても、へそより高い位置で打っても、あるいは上から叩きつけるようなスイング軌道であっても(物理的に難しいですが)すべて「合法」となります。
これによりプレーヤーは「フォームの違反」を気にすることなく、自分の最も打ちやすいスイングでサーブを放つことができます。
特に、テニス出身でスライスサーブが得意な方は、手首の角度制限を受けないドロップサーブを使うことで、強烈な横回転のかかったサーブを打つことが可能になります。
ドロップサーブ唯一の厳格なルール
ドロップサーブではフォームの制限はありませんが、ボールの「落とし方」には厳しいルールがあります。ボールは手、またはパドル面から自然落下させる必要があり、意図的に地面に叩きつけたり、上へ放り投げたり、指で回転をかけて落としたりすることは禁止されています。
審判は「リリースした手からボールが離れる瞬間」を注視しています。ボールに下向きの力を加えず、重力に任せてポロっと落とす。これさえ守ればあとは自由に打てるのがドロップサーブの魅力です。初心者の方が最初に覚えるサーブとしても、私はこのドロップサーブを推奨しています。
禁止されたスピンサーブと反則の境界線
ピックルボールの歴史の中で、一時期猛威を振るったのが「チェーンソーサーブ」や「スピンサーブ」と呼ばれる技術です。
これは、サーブを打つ前のトス(ボールリリース)の段階で、手やパドルを使ってボールに強烈な回転を与え、バウンド後に予測不能な変化をさせるものでした。しかし、レシーバー側が圧倒的に不利になりすぎるという理由から、現在のルールでは完全に禁止されています。
ここで重要なのは、「回転はインパクト(打撃)によってかけるものであり、トスでかけてはいけない」という大原則です。
スイングによってトップスピンやスライス回転をかけることは素晴らしい技術として称賛されますが、ボールを手から離す瞬間に指先でひねりを加えて回転させる行為は「イリーガルリリース(不当なリリース)」となり、即座にフォルトとなります。
審判はどう判定している?
審判はボールが手から離れた後の空中での挙動を見ています。もしボールが空中でクルクルと回転していた場合、実際に打つ前であっても「回転をかけてリリースした」とみなされ、フォルトを宣告される可能性があります。
自分では無意識のうちに、ボールを安定させようとして指先で撫でるようにトスを上げてしまい、結果として回転がかかってしまうプレーヤーも少なくありません。
これを防ぐためには、ボールを指先ではなく手のひら全体で持ち、手を開いて「置くように」リリースする練習が必要です。現代のピックルボールには「打つ技術」だけでなく「正しく落とす技術」も求められているのです。
2025年の改正で注意すべき変更点
ピックルボールのルールは競技の成熟に合わせて毎年微調整が行われています。2025年のルール改正(USA Pickleball公式規定等参照)においても、競技の公正性(インテグリティ)とスムーズな進行を目指した重要な変更がいくつか導入されました。
これらは単なるルールの追加ではなく、プレーヤーの「マナー」や「フェアプレー精神」をルールとして明文化したものです。
最も大きな変更点は、「パートナーによるフォルトコールの義務化」です。これまでは、例えばサーバーがベースラインを踏んでしまった(フットフォルト)際、それを判定するのは原則として審判か、サーバー本人の自己申告でした。
しかし2025年の新ルール(Rule 13.D.1.a)では、サーバーのパートナー(通常は前衛にいる選手)がその違反を目撃した場合、見て見ぬふりをするのではなく、即座にフォルトをコールしてポイントを放棄しなければならないと定められました。
また、サーブを受けるレシーバー側の権利も強化されています。サーバーがスコアをコールした後でも、レシーバーが準備できていない場合は、はっきりと声に出して「Not Ready」と言うことが正式な合図として認められました。
以前は手やパドルを上げるジェスチャーが主でしたが、声による合図が有効になったことで、サーバーによる「クイックサーブ(不意打ち)」を防ぎやすくなりました。
さらに、身体的な理由で手を使うのが難しいプレーヤーのために、サーブのリリースを「パドル面に乗せて落とす」方法も正式に許可されています。
ただし、この場合もパドルをスライドさせて回転を与えることは禁止されており、あくまで「乗せて、落とす」動作に限定されています。これらの変更はより公平で、誰もが気持ちよくプレーできる環境を作るための進化と言えるでしょう。(出典:USA Pickleball Official Rules)
違反を防ぎ安定させるサーブのコツ
ここまで厳しいルールや禁止事項についてお話ししてきましたが、「反則が怖くて思い切って打てない」となってしまっては本末転倒です。
ルールを遵守しつつ、試合で使える安定したサーブを打つために、私が実践している具体的なコツと練習法をご紹介します。
まず第一に、「10秒間のルーティン」を確立することです。ルール上、スコアコールが完了してから10秒以内にサーブを打つ必要がありますが、この時間を有効に使いましょう。
例えば、「深呼吸を一回する」「ボールを2回バウンドさせる」「ターゲットを見る」といった一連の動作を毎回同じリズムで行うことで、精神的な焦りが消え、フォームが安定します。
動画によるセルフチェックの重要性
自分の感覚と実際の動作には必ず「ズレ」があります。「パドルヘッドを下げているつもり」でも、動画で見ると水平になっているのはよくあることです。
スマホで自分のサーブを横から撮影し、インパクトの瞬間に一時停止して、「腕が上がっているか」「ヘッドが下がっているか」「打点が低いか」をチェックしてみてください。これを数回行うだけで劇的に改善します。
また、試合の序盤やどうしても緊張して手元が震えてしまうような場面では、無理にアンダーハンドサーブを使わずドロップサーブに切り替える勇気も必要です。
これを「逃げ」ではなく「確実な戦略」として使い分けることができれば、あなたはもう立派な上級者です。サーブの目的はエースを取ることではなく、有利な展開でラリーを始めること。これを忘れずにリラックスして打つことが最大のコツかもしれません。
実戦におけるピックルボールのルールとサーブ
ここからは実際のゲーム(特にダブルス)におけるサーブの運用について解説します。ピックルボール独自の「3つの数字」を使ったスコアコールやポイントごとのポジション移動は、初心者にとって最大の参入障壁と言われています。
しかし、このメカニズムを一度理解してしまえば、ゲームの流れが手に取るように分かるようになります。パズルのようなルールを紐解いていきましょう。
ダブルスにおけるサーブを打つ順番
ダブルスのスコアコールは「自分のチームの点数 – 相手チームの点数 – サーバー番号」という3つの数字で構成されます。(例:4-2-1)
ここで多くの人が混乱するのが、最後の数字「サーバー番号(1または2)」の意味と、誰がいつ打つのかという順番です。
基本的な考え方として、サーブ権が自分たちのチームに回ってきたとき最初にサーブを打つ権利を持つのが「右側(ライトコート)」に立っているプレーヤーです。この人が「第1サーバー」となり、スコアの最後に「1」をつけてコールします。
| 状況 | サーバー | 解説 |
|---|---|---|
| サイドアウト直後 | 第1サーバー(右側の人) | サーブ権が回ってきたとき、右側にいる人が必ず最初のサーバーになります。この人がミスをするまで「1」番として打ち続けます。 |
| 第1サーバーがミス | 第2サーバー(パートナー) | ここがテニスと違う点です。ミスをしても相手にサーブ権は移らず、味方のもう一人(第2サーバー)に権利が移ります。スコアの最後は「2」になります。 |
| 第2サーバーがミス | サイドアウト | 2人ともミスをして初めて、サーブ権が相手チームに移動(サイドアウト)します。 |
ただし、ゲーム開始時の「最初のサーブ権を持つチーム」だけには、例外的なハンディキャップルールが適用されます。
最初のチームは、一人目がミスをしたら、二人目には回らず即座に相手へサーブ権が移動します。そのため、いちばん最初のサーバーは自分を「2人目のサーバー」とみなして、「0-0-2(ゼロ・ゼロ・ツー)」または「0-0-Start」とコールしてゲームを開始します。これは、先行有利になりすぎないための公平な措置です。
ポイント獲得とサーブ権移動の仕組み
「サーブを打つたびに場所を入れ替わるのですか?」という質問もよく受けますが、答えはNOです。ポジションを入れ替わる(スイッチする)のは、「自分のチームがサーブ権を持っていて、かつポイントを獲得したときだけ」です。
具体的には、サーブ側のチームが得点すると、サーバーとパートナーは左右の位置(ライトコートとレフトコート)を入れ替わります。
これにより、サーバーは次のポイントでさっきとは異なるレシーバーに対してサーブを打つことになります。一方で、レシーブ側のチームはポイントを取られても位置を変えません。
ポジショニングの鉄則
- 得点した時:サーバー側の2人だけが左右を入れ替わる。
- ミスした時(サーバー交代):誰も位置を変えない。第2サーバーはその場から打つ。
- サイドアウト時:誰も位置を変えない。相手チームの右側にいる人からサーブ開始。
このルールにより「誰が誰にサーブを打つか」が常に変化し、ゲームに戦略的な深みが生まれます。
特に初心者のうちはポイントが入ったのに移動し忘れたり、逆にミスしたのに移動しようとしたりしがちですが、パートナーと「ポイントが入ったからチェンジ!」「ミスだからステイ!」と声を掛け合うことが、ミスを防ぐ一番の方法です。
足の置き場と正しいサーブの位置
サーブを打つ際の足の位置(フットフォルト)についても、非常に細かく厳格なルールが定められています。
せっかく良いサーブを打っても足の位置ひとつでフォルトを取られてはもったいないので、以下の3つの条件を必ずチェックしましょう。インパクトの瞬間にこれらすべてを満たしている必要があります。
- 少なくとも片足が接地していること:ジャンプサーブのように両足が浮いている状態はNGです。必ず片足はベースライン後方の地面(プレーイングサーフェス)に着いていなければなりません。
- ラインを踏まない・超えないこと:両足ともベースラインやコート内(ノンボレーゾーン含む)に触れてはいけません。ラインにつま先やかかとが少し触れただけでもフォルトです。
- 仮想延長線からはみ出さないこと:これが最も見落とされがちです。サイドラインとセンターラインには、後方に無限に伸びる「仮想延長線」があるとみなされます。この線より外側に足が出てはいけません。
特に3番目の「仮想延長線」は、ワイドな角度(コートの端から対角線に打つようなサーブ)を狙う際に違反しやすいポイントです。サーバーは自分が立っている位置がセンターラインとサイドラインの延長線の「枠内」に収まっているか、常に意識する必要があります。
現行ルールではパートナーもこの位置を確認する義務があるので、お互いに「ちょっと外に出てるよ」と指摘し合う文化を作ることが大切です。
パートナーによるフォルトコールの義務化
このセクションの冒頭でも少し触れましたが、2025年のルール改正(Rule 13.D.1.a)により、パートナーが味方の反則を視認した場合の対応が厳格化されました。
具体的にはサーバーのパートナー(前衛)が、サーバーのフットフォルト(ラインを踏んでいる、延長線を越えているなど)を目撃した場合、それを隠すことなく即座にコールし、ポイントを無効にしなければなりません。
これはプレーヤーに対して高い倫理観を求める変更です。以前であれば「審判が見ていなかったからラッキー」で済まされていた場面でも、今後は「味方が反則を指摘する」という、ある意味で非常に厳しい、しかしスポーツマンシップに溢れた行動が求められます。
もしあなたが前衛にいて、後ろで打つパートナーがラインを踏んでいるのが見えたらどうしますか?以前なら黙っていたかもしれませんが、これからは「フットフォルト!」とコールしなければなりません。
最初は勇気がいるかもしれませんが、これをお互いに徹底することで、「ズルをして勝つのではなく正々堂々と戦う」というピックルボールの素晴らしい文化が守られるのです。
ピックルボールのサーブに関するルールについて総括
今回はピックルボールのサーブに関する基礎ルール、2025年の重要な改正点、そしてダブルスにおける複雑な運用ルールまでを解説してきました。
アンダーハンドサーブの三原則(アーム軌道、パドル位置、打点の高さ)や、ドロップサーブという救世主的な選択肢、そしてダブルス特有の「0-0-2」から始まるスコアリングシステム。
これらは最初はとても複雑に感じるかもしれませんが、これらを一つひとつ紐解き正しく理解することは、単に「反則を避ける」ためだけではありません。
ルールの枠組みを知ることで「相手の弱点を突く戦略」や「自分たちのミスを減らすポジショニング」が見えてくるようになります。
特に初心者のうちは「ルールを守って、確実に相手コートの深い位置に入れる」。これだけで十分すぎるほど立派な戦略になるはずです。
闇雲にサービスエースを狙う必要はありません。まずはこの記事でご紹介したポイントを、次回の練習で一つずつ確認してみてください。
そしてパートナーと共にルールを守り、相手をリスペクトしながら、ピックルボールという素晴らしいスポーツを心から楽しんでくださいね^^
※本記事は執筆時点における「2025年版USA Pickleball公式ルールおよび関連資料」の情報に基づき、当メディア運営者マサルの経験も踏まえて作成しています。ルールは将来的に変更される可能性があるため、公式大会等に参加される際は、必ず最新の公式規定をご確認ください
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